富士酒造とは

すべてのお酒に人の手でひと手間を

富士酒造は、出雲平野の中心部に構える小さな酒蔵です。初代・今岡正一が昭和14年に創業し、出雲の地で富士山のように愛される日本一の酒が造りたいという想いをこめて「出雲富士」と命名しました。

立地や規模的な制約もあり、大量生産はできません。今あるもの、今できることの中で、着実に良いものをつくっていこうと思っています。

出雲富士には「出雲を醸し、富士を志す」という理念が根本にあります。やはり出雲の自然の空気の中で酒造りがしたいと思い、エアコンなどでコントロールしない自然の環境下で発酵しています。

また、蔵人の素手の感覚も大切にしています。蒸し上がったお米から麹をつくったり、発酵した醪を木槽搾りの袋に入れたり、お米をお酒に醸す過程で、出雲富士は蔵人の手の間を通ります。今日は水分が多い・少ない、温度が高い・低い、言葉では表現できないさばけ具合なども、人間の感覚に勝るセンサーはないと信じています。

だからこそ、自然の気候と会話をしたり、手で触れるところは触ったり、昔の職人さんもずっとそうしてきたように、人間の五感を駆使したお酒造りを続けています。「美味しいもの」を「すごく美味しいもの」に変えてくれるのは、不思議とそんな言葉や科学じゃ証明できないひと手間にあるような気がするからです。

もちろん、新たな技術を開発し取り入れることもありますが、すべてはもっと美味しいお酒をつくるため、そして美味しい以上の喜びと感動をお届けするため。残したい伝統を継承しながら、日々進化を続けています。

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蒸し

酒米が最も変化する工程の一つが「蒸し」です。昔から外硬内軟の蒸米が理想とされてきました。出雲富士には木製の四角の蒸篭型甑を使用しています。優しい蒸気で酒米一粒一粒に魂を入れていきます。香りとさばけが良く、外硬内軟の極上の蒸米に仕上がります。

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放冷

麹室に引き込む前に蒸したての酒米と近くで会話する事が大切です。今日の蒸上がりはどうか?硬くないか?柔らかくないか?香りは?味わいは?さばけはどうか?自然の空気の中でゆっくりと冷ましながら、素手で混ぜながら、全身を通して、蒸米と会話します。

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製麹

極上の蒸米一粒一粒に、麹菌が健全に育つように愛情を込めて麹を造ります。麹菌とお米が出す、わずかなサインを見逃さないよう、五感を研ぎ澄ましながら育てます。麹菌が成長する時に生じるエネルギーを循環させた、昔ながらの手づくりの製麹方法を極め、伝承すべく日々麹と向き合っています。

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上槽

大切に育てた醪を、富士酒造に代々伝わる昔ながらの木槽で優しくゆっくりと搾ります。全ての出雲富士は蔵人たちの手の中を通ります。この木槽搾りは非常に労力がかかり大変ではありますが、その分、生まれてくる出雲富士たちはどれも愛情に満ちた、朗らかで優しい調和のとれた表情をしています。

神様と人のあいだにはいつもお酒がある

出雲は日本酒発祥の地と言われています。日本最古の歴史書『古事記』には、出雲を舞台にした神話が数多く登場します。八つの頭と八つの尻尾をもつヤマタノオロチの神話では、スサノオノミコトはヤマタノオロチにお酒を飲ませ、酔っ払わせてから退治したと伝えられています。

また、約1300年前に編纂された『出雲国風土記』には「この地に神々が集まって酒造りを行い、180日にわたり酒宴を開いた」という記述があります。その中で、酒造りの神「クスノカミ」を祀り、日本酒発祥の地と伝えられているのが、出雲市にある佐香神社(さかじんじゃ)です。佐香神社の「さか(佐香)」が「さけ(酒)」の語源になったという一説もあります。佐香神社と出雲大社は酒造免許を受けている神社でもあり、出雲の神様とお酒には長い歴史と深いつながりがあります。

出雲では、お酒はただ飲まれるだけでなく、御神前にお供えされたり、神事に用いられたり、結婚式やお葬式、祭事にも使われます。お酒をつくる私たちが行けないような、神様に近いところにもお酒は行くものです。神様への奉納でも、特別な日のお祝いでも、いつもの晩酌でも、どんな時も最高のお酒であるように、富士酒造ではすべての出雲富士に対し手間ひまを変えず、責任を持って、胸を張ってお届けします。